「世界でいちばん貧しい大統領の世界一素晴らしいスピーチ」 

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+

ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ

 

ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ

2012年、ブラジルのリオデジャネイロで国際会議が開かれました。

環境が悪化した地球の未来について、話し合うためでした。

世界中から集まった各国の代表者は、順番に意見をのべていきました。

しかし、これといった名案は出ません。

そんな会議も終わりに近づき、南米の国ウルグアイの番がやってきました。

演説の壇上に立ったムヒカ大統領。

質素な背広にネクタイなしのシャツすがたです。

そう、かれは世界でいちばん貧しい大統領なのです。

給料の大半を貧しい人のために寄付し、大統領の公邸には住まず、町からはなれた農場で奥さんとくらしています。

花や野菜を作り、運転手つきの立派な車に乗るかわりに古びた愛車を自分で運転して、大統領の仕事に向かいます。

身なりをかまうことなく働くムヒカ大統領を、ウルグアイの人びとは親しみをこめて「ペペ」とよんでいます。

さて、ムヒカ大統領の演説が始まりました。

会場の人たちは、小国の話にそれほど関心をいだいてはいないようでした。

しかし演説が終わったとき、大きな拍手がわきおこったのです。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)  

 

▼「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」動画はこちら

オンラインDVDレンタルサービス 「TSUTAYA DISCAS」無料会員登録

 

ムヒカ大統領から日本人へのメッセージ

10月11日に放送されたフジテレビ「Mr.サンデー拡大スペシャル」で「世界で熱狂なぜ? “世界一貧しい大統領 日本人への感動の言葉」という番組が放送されました。

その動画があったので、テキストを書き起こしました。

「私は7歳の時に父を亡くしてね。当時、母は少ない父の年金すら15年ももらえず、苦しんでいた。

小さな畑を耕してね。そこで栽培していたもので生活していたんだ」 母ひとりの働きが家系を支える極貧生活のなか、貴重な収入減だったのが、幼いムヒカ氏も手伝ったという花の栽培だった。

しかも、そのきっかけは……。  

 

「世界でいちばん貧しいムヒカ大統領の世界一素晴らしいスピーチ」     

 

「実は家の近所に10軒か15軒ぐらいの日本人家族がいてね。みんな花を栽培していたんだ。幼い私も育て方を教わり、家計を助けたよ。彼らはすごい働き者でね。昔ながらの日本人だった。農民の思考で狭い土地に多くのものを耕していたんだ」

 幼いムヒカ少年の心に刻まれた、働き者で土に根ざした日本人のイメージ。

しかし、そんな極貧時代の経験が、彼を闘う男へと変貌させる。20代は南米最強の極左都市ゲリラ「ツパマロス」に加入。

腐敗する権力に戦いを挑み、数々の襲撃事件に加わる。

6発の銃弾を浴びながら、4度の投獄、2度の脱獄を経て、13年間の牢獄生活を送った。

 「50年前の私たちは富を平等に分配することによって世界をより良くできると考えていたんだ。でも、今になって気付いたのは、人間の文化そのものを変えないと何も変わらないということだ」  極端な思想だけで社会は変わらない。

そう気づいたころ、彼は再び、日本人の魂と出逢うことになる。

「ここには日本の造船会社が来ていてね。日本人技術者が大勢働いていたんだ。その子どもたちはここで成長し、自転車で学校へ通い、ここでサッカーを覚えたんだ。ある日、日本人の子どもが試合に出ていてね。激しいプレーで頭をけがして血を流してた。ついにはコートから出された。その子は泣いていたよ。でも傷が痛いからじゃない。最後までプレーできないことが悔しくて、名誉心で泣いていたんだ」  

名誉とは何ですか?(ディレクター)

「任務を最後まで全うするということかな。自分が引き受けたスポーツでの任務をね。君たちの文化ではとても大切なことだろう?」   そのころから日本の文化に心ひかれてきたというムヒカ氏も、こうした異文化への探求心が、時を同じくしてムヒカ氏を政治家への道に。すなわち、世界一貧しい大統領への道へと歩ませる。  

 

ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ9

 

これはムヒカ氏が新人議員のころの写真。自宅から国会までノーネクタイ。スクーターで出かけ、デニムジャケット姿で公務を行なう彼。

2010年3月、第40代ウルグアイ大統領に就任すると、宣誓陳述書にあげた個人資産は、およそ18万円という中古のドイツ車1台のみ。

また、給料のおよそ9割を社会福祉のために寄付し、残りの1割、わずか10万円ほどで暮らしてきたという。

そんな彼を、いつしか世界中のメディアが「世界一貧しい大統領」と取り上げるようになる。

 「世界一貧しい大統領」と世界中から言われてきましたが、率直にどう思われていましたか?(ディレクター)

「私はみんな豊かさというものを勘違いしていると思うんだよ。大統領は“王家のような生活”、“皇帝のような生活”をしなければいけないと思い込んでいるようでね 。私はそうは思わないんだ。大統領というのは多数派の人が選ぶのだから、多数の人と同じ生活をしなければいけないんだ。国民の生活レベルが上がれば自分もちょっと上げる。少数派じゃいけないんだ」  

 

「世界でいちばん貧しいムヒカ大統領の世界一素晴らしいスピーチ」3   

 

国を治める者の生活はその国の平均でなければならない。

それが命を張り、権力と闘ってきた男の覚悟であり、信念だった。

こうして自分を厳しく律する一方、人への優しさを感じさせるある伝説が世界を駆け巡った。

道端で途方に暮れていた男性のヒッチハイクを歓迎したのが、大統領その人だったのだ。

 思えば、大統領時代、テレビの生放送中に、突然、ホームレスから金をねだられたとき。

「汚いコイン1枚でいいんだ」(ホームレス)

「兄弟、コインはないなぁ。泣くんじゃない。ほら(といって紙幣を渡す)。

頑張るんだぞ」(ムヒカ氏)

「ずっと大統領でいてくれよ」(ホームレス)

「やだやだ! 御免だよ! 帽子を回してお金を集めよう」(ムヒカ氏)

 そこには厳しさと優しさがあり、人間の幸せとは何かを考える哲学と行動があった。

そしてその集大成が、あの伝説のスピーチとなった。

 

 

「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである。 ハイパー消費社会を続けるためには、商品の寿命を縮めてできるだけ多く売らなければなりません。10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです。長持ちする電球は作ってはいけないのです。もっと働くため、もっと売るための使い捨て社会なのです。私たちは発展するために生まれてきたわけではありません。幸せになるために地球にやってきたのです」 

そしてムヒカ氏は、私たち日本について語り始めた。

「日本人は魂を失った」

今年3月1日、自らの後任の新大統領就任式。

彼の頑固ぷりは健在だった。

新大統領にたすきを渡すセレモニー。

しかし、ムヒカ氏の首にネクタイはない。

異常なほどのネクタイ嫌い。

その訳を、彼は日本を例にこう語ったことがある。

「我々もイギリス紳士のような服装をしなければならない。それが世界中に強制されたものだからです。日本人ですら信用を得るために着物を放棄しなければならなかった。みんなネクタイを締めて変装しなければならなくなった」

彼にとってネクタイとは、欧米の価値観一色に塗りつぶされてしまった世界の象徴だったのだ。

そしてその彼の哲学の根底には、日本への尊敬の念と、私たちへの歴史への深い理解があった。

「ペリー提督がまだ扉を閉ざしていたころの日本を訪れた時の話さ。当時の日本は『西洋人は泥棒』って思っていた時代だね。あながち間違いではなかったけど、賢い政策で対応したとは思うよ。西洋にある進んだ技術に対抗できないことを認め、彼らに勝る技術をつくろうと頑張ったんだ。 そしてそれを成し遂げてしまった……実際にね。でもそのとき日本人は魂を失った」

 日本人が失った魂、それはいったい何のことなのか?

 

「世界でいちばん貧しいムヒカ大統領の世界一素晴らしいスピーチ」5 

 

「人間は必要なものを得るために頑張らなきゃいけないときもある。けれど必要以上のモノはいらない。幸せな人生を送るには重荷を背負ってはならないと思うんだ。 長旅を始めるときと同じさ。長い旅に出るときに、50kgのリュックを背負っていたら、たとえ、いろんなモノが入っていても歩くことはできない。よく分からないけど、100年前、150年前の日本人は私と同意見だったと思うよ。今の日本人は賛成じゃないかもしれないけどね」

 多くのモノを持たず、それ以上を望まなかったかつての日本人。

たしかに「足るを知る」を美徳とした文化は、いつしか私たちの手の平からこぼれ落ちてしまった。

今の日本についてどうお考えでしょうか?(ディレクター)

 「産業社会に振り回されていると思うよ。すごい進歩を遂げた国だとは思う。だけど本当に日本人が幸せなのかは疑問なんだ。   西洋の悪いところをマネして、日本の性質を忘れてしまったんだと思う。日本文化の根源をね。幸せとは物を買うことと勘違いしているからだよ。幸せは人間のように命あるものからしかもらえないんだ。物は幸せにしてくれない。幸せにしてくれるのは生き物なんだ」

モノは人を幸せにはしてくれない。

だからこそ、自分はこんな暮らしをしていると語ったムヒカ氏。

「私はシンプルなんだよ。無駄遣いしたりいろんな物を買い込むのが好きじゃないんだ。その方が時間が残ると思うから。もっと自由だからだよ。

なぜ、自由か?

あまり消費しないことで大量に購入した物の支払いに追われ、必至に仕事をする必要がないからさ。

根本的な問題は君が何かを買うとき、お金で買っているわけではないということさ。そのお金を得るために使った『時間』で買っているんだよ。

請求書やクレジットカードローンなどを支払うために働く必要があるのなら、それは自由ではないんだ」  

幸せに暮らすため、自由でいるために、みんなが物を欲しがらない暮らし。

しかし、この現代において、本当にそんなことが可能なのか? 率直な質問をぶつけてみた。

 その世界は実現可能だと思いますか?(ディレクター)  

「とても難しいね。君が日本を変えることはできない。でも自分の考え方を変えることはできるんだよ。世の中に惑わされずに自分をコントロールすることはできるんだ。分かってくれるかな?

君のように若い人は。恋するための時間が必要なんだ。

子どもができたら、子どもと過ごす時間が必要だし、友達がいたら友達と過ごす時間が必要なんだ。

働いて、働いて、働いて、職場との往復を続けていたら、いつの間にか老人になって、唯一できたことは請求書を支払うこと。

若さを奪われてはいけないよ。ちょっとずつ使いなさい。

そう、まるで素晴らしいものを味わうように、生きることにまっしぐらに」  

自らの体で戦い、導き出した信念だからこそ、そこに引き込まれるような言葉が生まれる。

そんなムヒカ氏の現在の夢。

ウルグアイの子どもたちを育てること。

自らの土地に農業学校を建てて、子どもたちに花の栽培などを教えるという。

そう、かつて日本人の先達がムヒカ少年に生きるすべを教えたように。

私たちが先ほど見た、あの子どもたちは、ムヒカ学校に通う生徒たちだったのだ。

 そこに学校をつくるのは一つの夢だったと思いますが、この先の夢・目標はありますでしょうか?(ディレクター)

 「私がいなくなったときに、他の人の運命を変えるような若い子たちが残るように貢献したいんだよ。本当のリーダーとは、多くの事柄を成し遂げる人ではなく、自分をはるかに越えるような人材を残す人だと思うから」

 いつの日か、そんな若者たちのなかから、本当にムヒカ氏の言葉を実現してしまう人材が生まれてくるのかもしれない。

最後に「日本の子どもたちへのメッセージ」を寄せた。

 

「世界でいちばん貧しいムヒカ大統領の世界一素晴らしいスピーチ」6 

 

「日本にいる子供たちよ。君たちは今人生で最も幸せな時間にいる。経済的に価値ある人材になるための勉強ばかりして早く大人になろうと急がないで。遊んで、遊んで、子供でいる幸せを味わっておくれ」    

 

  記事:|新井由己|noteより    

 

 

楽天カードでポイント生活はじめよう!

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+
サブコンテンツ

このページの先頭へ