おじいさんとの思い出に生きた犬

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おじいさんとの思い出に生きた犬

 

ある日、ペットショップに、

 70歳になるおじいさんが、犬を買いに来ました。

 

おじいさんは2年前に、最愛の奥さんであるおばあさんを亡くされ、

ずっと落ち込んでいました。

 

そんな時、ペットショップで見かけた

 ゴールデンの子供に一目ぼれし、

その日のうちに購入を決め、家族に紹介したのです。

 

しかし、息子夫婦も、孫も、犬は苦手の様子でした。

 

すぐさまペットショップに返してくるように言いました。

 

しかし、おじいさんは、

 「誰にも迷惑をかけない!

  ワシ一人で面倒を見る!」

と言い張りました。

 

犬はボブと名付けられ、

すべておじいさんが一人で面倒を見ることになりました。

 

一階の、庭の見える畳の部屋で、

おじいさんとボブはいつも一緒にいました。

 

おじいさんとの思い出に生きた犬

 

朝は一緒に起きて散歩に出かけ、

 町内を一周します。

 

帰って来てから一緒に食事をし、

 一緒に庭の手入れをします。

 

午後は一緒に昼寝をし、夕方にはまた散歩。

 

買い物に行く時も、夜寝る時も、

 何もかも一緒に生活しました。

 

トイレのしつけもすぐに覚え、

 噛むことも、ムダに吠えることもなく、

 近所でも評判の、良い犬に育っていきました。

 

何か問題が起きそうになると、

おじいさんはじっくり時間をかけて

 ボブに頼み込むように言い聞かせました。

 

一度だけ、ボブが散歩の途中に

落ちていたゴミを食べたことがありました。

 

おじいさんは、家に帰ってから、

 3時間くらいかけて、

ボブにそのことを話しました。

 

「道に落ちているものを食べるのは、

  とても危険なんだよ。

  ボブが病気になったら、

  ワシはどんなに悲しいか…」

 

まるで人に話すように、延々と話し続けました。

 

すると、不思議なことに、

 次の日からは、落ちているものに

全く興味を示さなくなったほどです。

 

ボブが一番好きなのは、暖かい午後のひと時、

 庭に面した縁側で、おじいさんがお茶を飲みながら、

のんびりと昔の話をしてくれる時でした。

 

おじいさんの昔話には、いつもおばあさんが出てきました。

 

ボブはおばあさんには、会ったことがありませんが、

すぐそこにおばあさんがいるような気持でした。

 

おじいさんも、じっと自分の話を聞いてくれるボブに対し、

 延々と、おばあさんとの暮らしの話を続けました。

 

陽だまりの中でのその時間は、

ボブとおじいさんにとって、

とても大切なものでした。

 

しかし、幸せな時間は3年間しか続きませんでした。

 

ちょうどボブが3歳の誕生日を迎える直前、

 

いつものように、縁側でお話をしていたおじいさんが、

 突然、胸を押さえて倒れました。

 

急性の心臓病でした。

 

倒れてから24時間後、

おじいさんは、おばあさんの所へ

旅立って行きました。

 

家の中がバタバタして、大騒ぎをしていましたが、

ボブには何が何だか分かりません。

 

ただ、その日から、おじいさんを見かけることはなくなりました。

 

葬式のため、ボブは部屋から出され、

 庭につながれました。

 

数日間だけは、息子夫婦がご飯を持ってきてくれましたが、

 誰も散歩に連れて行ってくれません。

 

葬式が終わった後も、

 誰もボブを家の中に入れてくれませんでした。

 

庭につながれた2~3メートルだけが、

ボブの歩ける空間。

 

ウンチは1週間に一度だけ、家族の誰かが

 イヤイヤ文句を言いながら、片づけていきました。

 

ボブは昼間はおじいさんと暮らした

縁側の上で過ごし、

 夜は縁側の下で寝ました。

 

一度だけ、奥さんが散歩に連れて行ってくれたことがあります。

 

しかし、久しぶりの散歩で嬉しかったボブは、

 喜んで走り出し、そのはずみで

奥さんは転んで怪我をしてしまいました。

 

久しぶりの散歩は1分で終わり、

その後、ボブは一度も外出させてもらえませんでした。

 

おじいさんが亡くなって6ヵ月経ちました。

 

家族は家の改装をしようと、

 建築会社の人を呼んで、家の計測を始めました。

 

その時です。事件が起こりました。

 

建築会社の人が縁側に近づくと、

 今までおとなしかったボブが、

 初めて、ウーーッと、低いうなり声をあげたのです。

 

たまたま近くにいた娘が、ボブのリードに手をかけ、

 縁側からどかせようとしたその瞬間、

 

いきなりボブが娘に噛みついたのです。

 

娘の手は血だらけになりました。

 

すぐに病院に運びましたが、

 8針も縫うほどの大怪我でした。

 

その事件があってから、家族の誰が近づいても、

ボブは牙を剥き出しにして、怒るようになりました。

 

ご飯の時も、家族はそっと近づき、

 口が届くギリギリのところにエサを置き、

 立ち去るようになりました。

 

家の改装計画は中断され、

その後3ヶ月は、そのままの暮らしが続きました。

 

悩んだ家族は、しつけの本を読みあさり、

どうしたら犬と仲良くなれるのか、

どう扱えばいいのか、勉強しました。

 

この時になって、やっと家族は

 ボブと向き合おうという気持になったようです。

 

おかげで、家族は徐々に

 ボブに近づくことができるようになりました。

 

半年後には、

 散歩に連れて行けるようになりました。

 

ボブも、家族の「マテ」や「オスワリ」などにも

 だんだん従えるようになりました。

 

しかし、その半年後に、

 2度目の事件が起こったのです。

 

その事件で、家族は新たな発見をすることになります

 

 

もう十分仲良くなって、

 噛まれることもなくなったと安心し始めた矢先、

 今度は奥さんが噛まれたのです。

 

たいていボブは、午後は縁側で過ごします。

 

そして夕方になると、庭に降り、

 散歩を待ちます。

 

しかし、夕方用事があった奥さんは、

 午後のうちに散歩を済ませておこうと、

 縁側にいたボブを連れ出そうとしました。

 

その時、突然、ボブは奥さんに噛みついたのです。

 

縫うほどではなかったのですが、

その日ボブは、夜まで興奮していました。

 

既にボブを家族の一員として

愛していた家の人たちは、

 訓練士に相談しました。

 

そして、今までのボブとおじいさんのこと、

その後の暮らし、

 

娘さんが噛まれた事件、今回の奥さんの事件など、

 全て話をしました。

 

訓練士は、一日かけてボブと過ごしてみることにしました。

 

そして気が付いたのです。

 

ボブは、ご飯を食べる時も、散歩の時も、

 特別嬉しそうな顔をしないことに!!

 

普通の犬であれば、これらの時や、

 家族が帰ってきた時に、

 最も嬉しそうな顔をするものです。

 

ボブが一番幸せそうな顔をしているときは、

 

午後のひと時、

 

おじいさんと暮らしていたあの縁側で、

ぼんやりしている時なのです。

 

ボブは恍惚感のある表情で、

まるで何かを思い出しているように、

 空に向かい、目を細めて、嬉しそうにしているのです。

 

おじいさんとの思い出に生きた犬

 

誰と話すわけでもなく、吠えるわけでもなく、

ただひたすら遠くを見つめています。

 

短くて1時間、長くて3時間ほど、

そのままじっとしているのです。

 

ボブはおじいさんと縁側で過ごした

 あの幸せな日々が、

 

何よりも大切な思い出であり、

 

今でも何よりも大切な時間だったのです。

 

家族は、ボブの心を分かってあげられないことを、

 涙して、悔やみました。

 

その後、ボブは9歳まで生きました。

 

その間に、家は増改築を繰り返しましたが、

 

ボブがおじいさんと過ごしたあの縁側だけは残しておきました。

 

ボブはその後、一度も噛むことなく、

 

家族も、ボブが縁側にいるときは、

なるべくそっとしておくようにしました。

 

ボブは死ぬ前の日まで、

 毎日欠かさず縁側で過ごし、

 思い出を噛みしめながら、

 幸せそうにしていました。

 

ボブの一生は、

 大好きなおじいさんとの生活が3年。

 

そして残りの6年間は、

おじいさんとの思い出の中だけで生きたのです。

 

そして最期は、大好きな縁側で、

 家族に看取られながら、息を引き取りました。

 

縁側での死に顔は、

 

まるで天国のおじいさんに会えることを、

 喜んでいるかのように、

 安らかだったそうです。

 

 

 

 

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